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「合わせる」ではなく、自分がフリーになって「合う」


先日、私も参加している弦楽合奏団に、
アレクサンダーテクニークの先生をお呼びしました。
この弦楽合奏団は、指揮者はいません。
弦楽器指導者・プレイヤーを仕事としている方々の
集団です。

今回お呼びした先生は
「トロンボーンプレイヤーでもあるアレクサンダーテクニーク教師」。

お呼びしたのは私でしたが、実はとても不安でした(笑)。

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前半のレッスンは、
身体のバランスや動きなどに、何か負荷がかかってないか等
メンバー全員が講師にみていただきました。

・姿勢はポジションではない(背骨の上で頭がバランスを取っていればうまくいく)。

・腕、脚はどこから始まっているか?それをフリーにする事により、より自由な演奏が可能になる

等のお話しがありました。

「背が伸びたみたい」
「なんかいいかんじ」
「マッサージの後みたい」
「ヴァイオリンを上げた時に、腰が痛くなるのもどうにかしてほしい」
「ヴァイオリンを顎にはさんでも縮こまらないやり方は?」
など、参加メンバーからは感想以外に
楽器に関する質問は次々と続きました。
それに対する具体的アプローチも沢山出されました。

この団体は、アレクサンダーテクニーク(AT)の知識があまりなかったので
出てくる質問は「合奏のレベルを上げる」事が中心でした。

「××小節からセクションごとにテンポが少しずつずれるのをどうにかしたい」
「テンポを上げていきたいのに、周囲がついてこなかった時に
どのようにすればテンポをあげられるか?」
「同じパート内なのに、ずれてしまう人がいる。一人一人ならきちんと弾けているのに!!どうしたらいいの?」

等、弦楽器の技術的な問題ばかりです。

ですので後半は
「弦楽合奏におけるATの利用」レッスンとなりました。

最初にいつものように、コンサートマスターを意識し
弾いてもらいました。
比較的きれいにまとまりました。
でも合わないところは、顕著に合わないのがわかりました(笑)。

そこでAT講師のアドバイスは

背骨の上で、頭がバランスをとっていればいい。
自分の頭と背骨がフリーの状態であるよう自分の面倒をみながら合奏する。
わざわざコンマスや周囲と合わせようと思わなくてもいい。

というものでした。

「それでは、コンサートマスターのしたい音楽にはならないのではないか?」
と私は思いましだ。

実際に出てきた音は、やわらかい、音楽的でゆったりとしたものでした。合ってるとも言えます。

ミクロの単位で言えば、少しずつはずれています。
しかし、ミクロのずれより、解放された音とフレーズは、
とても魅力的でした。

弾いている本人たちは
「いつもよりテンポが遅いから弾けた」
と言っていましたが
聞いている方はそうは思えず、より自由に音楽的になったように感じました。

その時、私は、私自身がコンサートマスターに対し、
勝手な思い込みをしていた事に気づきました。

あたりまえのことではありますが
指揮者やコンサートマスターに合わせ演奏していくのも大事ですが
音楽の本質、自分の状態も大事。
自分の受け取り方いかんによって、音楽は随分変わる
それに気がつきました。

そのほか、
人は楽しそう、興味がそそられるところに寄っていく
言葉に関する事
自分のスタンスなど
講師から、色々お話しいただきました。

そのほか、参考文献も教えて頂きました。

・実践アレクサンダーテクニーク (ペドロ・デ・アルカンタラ) http://www.shunjusha.co.jp/detail/isbn/978-4-393-71379-2/
 
自己認識、問題解決、意志決定、感情の処理、対人コミュニケーションについても書かれている本。チェリストが書いています。

・自然に演奏してください Just Play Naturally (ビビアン・マッキ―)
http://www.fubaisha.com/search.cgi?mode=close_up&isbn=5237-2
カザルスのレッスン内容が語られている本のようです。

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「もう少し知りたい!!」
「こういう考え方があるという事を体験できた」
「楽器をもつという根源的な問いかけを考えることになった」
「自分の中の無理のある個所をシンプルにする。それが音色・音質に変化をもたらす」
「一回ではなかなか難しい」
等、参加メンバーから感想をいただけました。

家族的に、意見を述べながら練習を行う、この弦楽合奏団。
興味が尽きないメンバーによる積極的な質問・意見が
今回の講習会成功につながったと思いました。


ドキドキのAT講習会でしたが
満足できるものとなり、紹介した私も嬉しい限りでした。
 




今回お世話になった佐藤拓先生のH.P.です。
http://musik.grupo.jp/